※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
大峰・前鬼川不動七重滝
2015年7月26日

前鬼川、不動七重の滝はその名の通り、60mの大滝F5を筆頭に、7段合計標高差140mの連瀑。大滝の多い紀伊半島においても、豪快さにおいて随一の存在と言っていいだろう。大滝登攀だけでなくゴルジュ突破の要素もあり、1日で7つの滝を超えるのでスピードも必要。渓谷登攀の総合力を求められる課題だ。
(レポート:相川 写真:相川)
気になっていたのは水量。一週間前の台風で豪雨が降り、今週の水木で130mm程の雨が降っている。登攀ラインが完全に水をかぶるとどうにもならないが、遠望する限り大丈夫か。
林道上にある展望台手前、700mほどのところに滝見物の遊歩道の入り口があり、これを利用して入渓する。最初は平凡な河原だが、川が右に曲がるところですぐにゴルジュが始まる。
前方にF1が見えてきた。F1は展望台からも木に隠れて見えないが、大釜を持つ20mの豪快な滝だ。F1に取りつくためには、大波立つこの大釜を泳がなくてはならない。
<F1>
パートナーがまずトライするが、波に負けて全く進めず戻ってきた。続いて私もトライ。途中までへつれるが、その先の泳ぎが厳しい。波に負けて危うく溺れそうになり、PFDを持って来なかったことを後悔。いったん岩棚に這い上がり、呼吸を整える。ここまでプレッシャーのかかる泳ぎはなかなかない。
2度目のトライで、カムをセットして強引に側壁に上がり、側壁をトラバースしてなんとか泳ぎの核心を突破、後続を引っ張り寄せる。F1正面の岩棚でフラットソールに履き替えて、いよいよ登攀開始だ。
大釜の側壁をさらにやや悪いトラバースをこなして滝本体の左壁に取りつく。F1は細かいホールドをフリーでつなぐ、テクニカルな登攀だ。2か所ほど、ハーケンを足元にしての微妙なムーブを強いられる。中間テラスでピッチを切りビレイ。緊張感のある、楽しいピッチだった。
2ピッチ目は、出だしピンの取りにくいステミングから、テラスを経由して、短い垂壁を越えF2の釜がある展望台からもよく見える広場に飛び出す。F1の釜とは打って変わって、日が当たり明るい。そして、足元にF1、目前にF2、その向こうに豪快なF5が見えている滝に囲まれた素晴らしい空間だ。
<F2>
F2は15mの末広がりの美しい滝。登攀ラインは傾斜の緩い右壁だが、それにはF1の落ち口を横断しなくてはならないが、これが怖い。できるだけ上流側に支点を取り、流されても最悪の事態にはならないようにしたうえで、ロープをつけて横断する。
F2の右壁は、プロテクションを取りにくくランナウト気味になるが、登り自体は易しい。
<F3・F4>
F3とF4(5m×2)も同様で、二つの滝をつなげて右壁を登る
<F5>
いよいよ、F5だ。
本流の水を一気に60m叩き落とすF5の釜の瀑風はすさまじい。釜からダイレクトに取りつくのは不可能なため、右のリッジ状を登って、1段上がったテラスを目指す。樹林帯に入ると、展望台からと思われる踏み跡に合流。踏み跡をたどり、簡単なトラバースでテラスへ。
さて、F5はどこを登ろう。目につくラインは、まずは半ば水流の中の凹角。形状的には弱点だが、激シャワーになるだろう。
もう一つは、その右壁のフェースだ。
まずは水流を嫌がって、右壁のフェースに取りついてみる。ハーケンを2枚打ったところで、急に悪くなる。この先、プロテクションが全くない状態で、ランナウトして登るにはリスクの高いクライミングだ。水流際を探るにことにして、いったん下降する。
改めて水流際にトライ。シャワーはひどいが、上空からの直撃弾はなく、耐えられる程度だ。クラックにがっちりとカムのプロテクションも取れ、これならいけると思いきって垂壁を乗り越す。右に水流から抜け出し、テラスでビレイ。
セカンドを確保。まさに嵐の中。
F5の2ピッチ目は、凹角からクラック沿いに登る。傾斜があり、パワフルなクライミングだ。フリーで登るのはなかなか難しいが、プロテクションががっつりと取れるので思い切って行けるだろう。
ただ、クラック沿いでプロテクションが取れるのにもかかわらず、このピッチだけやたらとボルトが連打されているのが残念だ。
振り返ると、素晴らしい光景
3ピッチ目は、すっきりとしたフェース。ランナウト気味にロープを引っ張り、落ち口のテラスに立った。
<F6>
大物は片付いたが、結構悪いと聞くF6、F7が待っている。
水路沿いに歩いて行くと、大釜を持ったF6が見えてきた。
泳いで取り付き、スラブを登る。登るほど、傾斜がきつくなる嫌なタイプのスラブだ。
一番傾斜のきつい最上部が苔に覆われ、非常に厳しいクライミングとなる。プロテクションが、足元5m下の状況ではシビアなムーブにトライできなかった。垂れていたロープをたまらず使い、上部の樹林帯へ。
<F7>
F7は切り立った釜に多条の滝をかける、弱点の見出せない滝だった。F6上部から側壁をトラバースし、巻く。
これで、不動七重滝は完登。F7の上に、大釜を持つ2m滝があるが、それを越えると、一気に癒し渓となった。時間も余裕があり、明るいうちに十分帰れるだろう。
泳ぎを交えながら、しばし癒し渓を遡行。最後の3m滝をショルダーで越え、トンネル上の林道に上がることができた。

7:40  林道出発(遊歩道入り口)
8:20  F1 下
11:30 F5 下
15:30 F5 落ち口
17:00 F7 上
17:50 林道(トンネル上)

不動七重滝~垢離取場までの前鬼川コンプリート遡行図(クリックで拡大します)