※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
台湾・哈伊拉羅溪遡行Day7-11
2014年11月21日

2014年台湾・哈伊拉羅溪遠征へ

<11月21日>
7日目の朝、僕らはまだ核心と目される地点、沢が一気に180mも標高を上げている場所の手前にいた。食料は残り5日分。下山にどうやっても2日は要するので、この日のうちになんとかして上流部の入り口にある嘆息灣營地(かつて、Jasmineが発見した絶景のキャンプ適地)に辿りつかなくてはならないのだ。
(レポート:相川 写真:相川、大西、Jasmine)
180mを一気に落とす巨瀑、あるいは、不可能系の大ゴルジュ。そんな最悪のケースが頭をよぎる。朝イチで哈伊拉羅北溪と南渓の二股を越え、南渓入口の冷たい泳ぎをこなし、小岩壁をロープを出して越える。
すると、眼前に広がったのは7段130mほどの大連瀑帯だった。ゴルジュ内の通過は無理だが、下段の滝をこなして、右岸側に入り込むルンゼに弱点がありそうだ。
ガレガレのルンゼを慎重に登り、連漠帯の上に巻き降りる。先日までのシビアな巻きを考えると思ったより容易で、渓がほんの少し情けをかけてくれたかのようだった。
昼までに、この区間を抜けられたのは大きい。
連漠帯を越えると、間もなくゴルジュ状(第7ゴルジュ)となるが、両岸は明らかに低くなり、通過はかなり易しくなる。
続く第8ゴルジュは高低差のほとんどない水路のようなゴルジュ。意を決して泳ぐ覚悟で突入すると、かなりスピーディに抜けることができた。
不意に眼前が劇的に開け、広々とした草原が広がった。嘆息灣營地だ。ああ、これで帰ることができる。
寒さに震えながら、濡れた服を全部着替えてホッと一息。
<11月22日>
嘆息灣營地は、期待に違わない、素晴らしいビバークサイト。しかし、夜の寒さが先日までとは格段に増してきていた。ほぼ北回帰線直下とはいえ、標高は2500mを越え季節は11月。朝起きると、すべてのものが凍りついていた。ここから先は、濡れには十分な注意を払わなくてはならない。遡行で体を濡らし、もし焚火ができなければ致命的になりうる。
上流部は相変わらず水路状であるものの難易度はぐっと落ちた。苔むした美しい淵と小滝が続く渓相はまさに幽玄。盛夏ならば、美しい淵を水と戯れながら遡行したいようなところだ。
残念ながら、水と戯れるには水の冷たさは耐えがたいレベルになっていたが、もう命の危険を感じるような場所はない。
<11月23日>
おそらく、今日が沢中で過ごす最後の日になるだろう。
沢の中でもこの寒さ。稜線でのビバークは極力避けて、今夜は避難小屋で過ごしたいところだ。
稜線が近づくにつれ、再び傾斜が強まってきた。3000mを越える標高でも、ゴルジュや20mクラスのスケールのある滝が連続するのは、さすがに台湾の沢。
とはいえ、ここまでの遡行をこなしてきた僕らにとっては問題にならない容易さ。苔むした渓相が美しい。
最後の一滴を確認した後、ガレ場を登って、午後14時過ぎ、馬利加南山東峰、3546mまで抜けることができた。この日は避難小屋泊り。久しぶりの人工物を見た。
<11月24~25日>
もっとも、まだ中央山脈のど真ん中。10時間を越えるコースタイムを、みっちり2日間歩かなくてはならない。
夜明けとともに、出発する。
開けた草原あり、好展望の尾根あり、巨大な崩壊地の下りあり。変化に富んだ道を歩いて、11月25日、東海岸の瑞穂に下山。
そして台湾観光もほとんど味わうことなく翌26日には機上の人となっていた。一介のサラリーマンでもある僕にとっては、インフラが整理され、ギリギリの日程でコンパクトな冒険ができるのも、また台湾の魅力だ。
遡行図(図をクリックで拡大)