※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
ネパール中西部 プタヒウンチュリ7,246m その4ベースキャンプからキャンプ3編
2014年9月5日

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ネパール中西部 プタヒウンチュリ7246m その3「カコットからベースキャンプ編」

9月5日。チュレン7,385mから朝日が昇った。これから先のことを考えると、青空が広がっているだけで運が味方についているように感じてしまう。プタヒウンチュリは技術的にはやさしい山である。登頂できるかどうかは天候しだいであるが、ここ数年モンスーンが開けるのが遅かったという情報を聞いているので、不安が募るばかりである。今日は休養を兼ねて装備の確認を行った。(レポート/写真:林)
■9月6日
C1まで荷揚げに行く。シーズン最初のパーティのため、昨シーズンのトレースがうっすら残っているだけで不明瞭である。右側からの落石に注意して、歩きやすそうなところを選んで進む。今後、何度もここを通ることになるため、しっかりしたトレースが出来るように短い間隔でケルンを積み、毎回同じところを通るようにした。
5,283mで氷河の末端が現れる。情報ではさらに氷河左側のモレーンを登り、稜線から来ている氷河の末端あたりがC1のはずなので、荷物を置いて空身で見にいくことにした。C1予定地のモレーン上は大きな岩が堆積しており、キャンプサイトとして整地するには労力が非常に必要となりそうなので、荷物を置いてきた5,283mの氷河の末端にC1を設置してベースキャンプに戻った。
■9月7日
今日もC1まで荷揚げに行く。昨日のケルンに沿って行くが、わかりづらい部分はケルンを積み増しながら進んだ。やはり2日目は体も軽く、早めにC1に荷物を置いてベースキャンプへ戻った。明日からしばらくC1に滞在するつもりなので、午後は洗髪、髭剃りをして明日からに備えた。
■9月8日
今日からC1に滞在してC2を目指す。さすがに3日目ともなると完全に高度に順化して3時間ほどでC1に到着した。ガイドのパサンは風邪を引いたようでここからベースキャンプに降りてもらう。我々は雪の取り付きまで荷物を上げるためにモレーンを上っていった。すると先日偵察して引き返した地点から20mほど先の大岩の裏にテントが6張りほど張れそうな、きっちり整地されたキャンプサイトがあった。ここが本来のC1のようで偵察が甘かったようだ。少しあがった氷河の取り付きに荷物をデポして下のC1へ戻った。
■9月9日
C2へ高所順化のため出発する。本来のC1を通り越して昨日のデポよりブーツに履き替えてアイゼンを装着して登りはじめる。傾斜が落ちたところよりスキー登高に切り替えた。雪面はアイスバーンではあるが、溶けて凍ってを繰り返すうちにとげとげになり、スリップすることなく快調に登ることができた。5,750m標高差467mで今日の行動を終了した。
C1に戻ると鳥にテントのフライを破られていた。換気のために開けておいた入り口から進入し、行動食を全て持ち去っていた。鳥までは想定していなかった。
■9月10日
やはり本来のC1 5,486mにキャンプを移動させたほうが効率が良さそうなので、ガイドに荷揚げを手伝ってもらうためにベースキャンプへ下山した。ベースキャンプでも鳥やねずみなどに食料を荒らされているようだ。お茶を飲んで引き返し、全ての荷物を分担して本来のC1へキャンプを移動した。テントに食料を置いておくと動物に荒らされてしまうため、ガイドが石室を作ってくれた。
モレーン上のC1から氷河末端までは一度20mほどモレーンを下り、氷河末端に取り付くことが出来そうであるが、雪解け水が勢いよく流れ、そのまま氷河に吸い込まれている。万が一落ちると氷河に吸い込まれてしまいそうなので、モレーンを100mほど登り、氷河の側壁のガレ場をトラバースした地点から氷河に取り付いた。
■9月11日
朝、起きてみると一面雪で真っ白である。デポ地点で靴を履き替え高所順化に出発する。ぱらぱらと雪が降っていて、視界も悪く、気持ちが上がらない。シールに雪が付いて下駄になって歩きづらい。今まで見たことがないようなシュカブラ帯を越えたあたり6,050mで視界が悪く、クレバスの危険性があるため終了。視界も悪いので滑らずに板もデポして歩いて下山。
■9月12日
今朝も5cmくらい雪が積もっている。空には青空が広がり、昨日より気持ちが前向きになる。今日はC2設営のためにガイドのパサンに8時に来てもらうことになっている。パサンはC2用の荷物を持って勢い良く登っていった。この程度の標高ではまったく問題がないということだ。さすがシェルパ族である。我々は自分たちのペースでゆっくりC2を目指す。
13時。6,123mのC2に到着した。高度による影響はそれほどない。先についていたパサンが整地をしてテントを張っている最中だった。C2を設営した尾根上は比較的フラットであり、小尾根の裏にしたため風の影響も少なそうである。テントを設営して早々に下山にかかる。
また、板を担いで登ることを考えると滑ることを躊躇してしまうが、雪質、視界とも良く、今後、好条件があるとは限らないため、確実に滑ることが出来るときに滑ることにした。若干重めの雪であるが、板も走り気持ちが良い。標高差で200mほどであるが、ネパールに来て初滑降であるので感無量である。
■9月15日
C1で1日休養し、昨日青空の下C2入りした。今朝も青空が広がり遠くまで見渡せ、すぐとなりの美しい三角錐の山が真近に見える。朝の景色を楽しんだ後テントに戻ると、右目の様子がおかしい。全ての輪郭が光ってよく見えない。目を閉じてしばらくしてから開いてみると、噴水状に黒いものが目の中に広がった。眼底出血だ。右目の上部1/3が黒くなり見えない。高所順化も順調で体調も良かったので予想外である。登山を続行するべきか敗退するべきかしばらく自問自答した。
敗退して病院にいって診察してもらいたいという気持ちが一番強かった。しかし、日本に戻るには日数が必要である。リスクもあるが登山を続行することにしてC3設置へ出発した。
傾斜の緩やかなC2から続く尾根をスキーにシールを張って、小さなクレバスを避けながら登っていく。巨大一枚バーンの取り付きでスキーアイゼンを装着してジグザグに高度を上げ、その後、巨大一枚バーンをひたすらトラバースして反対側の尾根に近づくが、テントを張れるような平らな場所はなさそうだ。
C3に関する情報をしっかり取っていなかったが、どうやら斜面のど真ん中にC3を設置するしかないようだ。どこもほぼ同じような傾斜であるが、気持ち傾斜がゆるそうな斜面を削って6,553mにC3を設置する。C2からC3まで標高差430m、強いチームはC2から直接頂上を目指すようだ。当然我々はC3から頂上を目指す。今日は食料とガスカートリッジをデポしてC2へ引き返した。
C3設置まで順調にくることが出来た。心配していたモンスーンの影響もそれほど無かった。ここ数日、天候も安定しディープブルーの空が広がっている。この不純物の無い純粋な空を見るために高所登山をしているといっても過言ではない。突然の眼のトラブルがあり見づらいが症状は進行していない。とりあえずアタックは出来るだろう。一旦、ベースキャンプへ戻り休養する。コックのジャスコマが作るおいしいネパール料理が楽しみだ。

⇒ ネパール中西部 プタヒウンチュリ7,246m その5に続く