※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
2013年K2遠征その⑩_BCでの生活その他
2013年7月27日

前の記事:2013年K2遠征その⑨_アタック

<BCの位置>
BCはK2の南側、ゴドウィン・オースティン氷河のモレーン上にある。C2からC3手前まではBCから丸見えで、トイレ等も注意しないと双眼鏡ですべて見られてしまう。
(レポート:小谷部、写真・動画:栃木K2登山隊2013)
<BCの設営場所>
BCのモレーン上流部はクレバスが多くなり危険で、K2方面からの雪崩に巻き込まれる可能性も高くなる。よって、アプローチが近いからといって、最上流が一番良い場所とは限らない。なお、最下流の我々のテントから最上流のスイス隊のテントまでは歩いてだいたい15分くらいだった。
<キッチンテント・食堂テント>
シートで屋根を繋げたテントの右側がキッチンテント、左側が食堂テント。BCで食事を作ってくれるパキスタン人コック達の寝床、食堂件炊事場がキッチンテントで、隊員達の食事やミーティングする場が食堂テント。両テントは天気が悪くても快適に移動できるようにシートで屋根と壁を繋ぎ、壁のシートは出入りを考え着脱可能にしている。
<個人テント>
遠征中唯一のプライベート空間。BC滞在の1ヶ月半ほど張りっぱなしで、徐々に高台のようになっていく。日射によりテントの周りは融けてもテントの下は日が当たらず融けにくいためで、テントの周囲が空中に浮き始めると平らな場所へ移動する。また、紫外線がよほど強いのか、新品テントでも撤収するころには劣化して色あせていた。
<トイレ・シャワー室>
トイレは、各テントから少し離れたところに石を組み、その上にトイレ用テントを立てただけ。溜まったら石で埋めて場所を移動する。最近は環境団体が樽を持ってきて仮設トイレの様なものを設置したりしているようだが、中途半端でいまいち使えない。
シャワー室は石を平に敷いて、その上にシャワー用のテントを立てただけ。バケツに入れたお湯を持ち込み、頭からかぶるだけだが室内は意外と暖かく寒くない。コックはよく使っていたようだが、私は1回くらいしか使わなかった。
<電源(ソーラー発電・発電機)>
パソコン、衛星携帯、カメラ等の電子機器の充電はソーラー発電で対応。ソーラーパネルは軽量コンパクトなシート状のものは高価なので、重くてかさばるが安価な30Wパネル2枚を使用。チャージコントローラー、バッテリー、インバーターと接続し毎日充電を行った。曇り空や小雪がちらつく時でも発電し予想以上に使えた。なお、予備電源として発電機(200V)も持って行ったが、メンテナンスに手間がかかるので、キッチンテントの夜の照明程度にしか使わなかった。
<無線のアンテナ>
食堂テントの脇に無線用のアンテナを立てるが、これに接続できる無線機が壊れてしまったのか全く受信できず使えなかった。しかし、普通のハンディタイプの無線機同士でも、少し聞き取りにくい時もあったが十分やり取りできたので大事には至らなかった。
<洗濯>
長いBC生活では洗濯をして服を洗わないと、汗等による悪臭により隊員間で苦情が出る。お湯を沸かしてもらいバケツに洗剤を入れ洗うのだが、さすがにすすぎまでお湯を使うわけにはいかない。そこで、BC東側を流れる川ですすぐのだが、氷河の上を流れる川なので氷水のように冷たい。炊事用ゴム手をしてもすぐに手が冷たくなり、首筋に手を当て温めながら行う。なお、BCは空気が乾燥しているので、岩の上に広げているだけで夕方には乾いてしまう。
<洗髪>
洗髪はシャワー室を使わず、外でお湯をかけてもらいながらする。シャワーは浴びずとも、だいたい1人2,3回は洗髪をしていた。
<双眼鏡>
双眼鏡を使わないと小さくて分かりにくいが、BCからブロード・ピークのノーマルルートが良く見える。ブロード・ピークはK2よりルートが伸びアタックも早いので、暇つぶし的感覚でよく見ていた。特に「ブロード・ピークで遭難」の一報を聞いてからは、心配で時間があればブロード・ピークの動向を観察していた。
<読書>
上部に登らずBCに滞在するしているときは、食堂テントや個人テントで各自が持参した文庫本を回し読みして時間をつぶす。1人4、5冊程度持ってくるとかなりの量になるので、全部読み切ることはなかった。
<食事>
BCではコックが作るパキスタン料理が基本。一応日本から、BC用の食糧も持って行くが限りがあるので、これが食べれないと活動できない。なお、高所で沸点が低いため、野菜や肉は全て圧力鍋で火を通した後調理していた。
<イベント>
BC滞在中に隊員の一人が誕生日を迎えたので、コック達が手持ちの食材から他隊にも手伝ってもらい、ピザもどきやケーキもどきを作ってくれた。そしてにぎやかに歌でお祝い。

<ヤギ>
BCでは、肉は貴重だ。安くはないし、途中のキャラバンを考えると生きたまま鶏かヤギを連れてこなければならないため、毎日食べれるほどの量は無い。そんな中、7月半ばにヤギが1匹追加の荷揚げでやってきた。内臓や肉は今後の料理に使うため切り分けて保存したようだが、頭と足はそうはいかないのか塩ゆでにして、その日にみんなで食べてしまった。ちょっと臭いが初めて食べた頭と足は結構うまかった。
<力作?>
副隊長の力作。アタックに向けてBCであまりものを使って作成したが、出番前のC2から撤退となり残念。
<お客>
たまにK2のBCに中国や韓国、ヨーロッパ各国のトレッキング隊がやってくる。トレッキングのオプションとしてコンコルディアから日帰りで遊びに来ているのだが、残念ながら日本のトレッキング隊はオプションが無いのかコンコルディアから上に登ってくることはない。トレッキング隊のポーターやガイドが、コックやハイポーターと知り合いか同郷だったりすると、情報交換がてらテントに中に招き入れ、ミルクティーやクッキーなどを振る舞うこともあった。
<カラス>
標高5000mのBCにもカラスはやってくる。日本にいるような真っ黒のカラスもいるが、高所で多いのは嘴の黄色いカラス(キバシガラスというらしい)だ。BCでは残飯を石の上にまきカラスに与えているせいか、テント内の食糧を奪うことはない。しかし、上部キャンプでは油断するとカラスに食料を持って行かれる。今回ABCでテントが破れたとき、その穴からカラスが侵入し食料を一部持って行かれてしまった。また、高所に強くC4の最終キャンプまでやってくるので安心できない。実際2009年はC3の食糧をカラスに全部持って行かれてしまった。

<滝>
日中は温かい為、BC左岸の滝に水が流れていた。2009年には水が流れることはなかったはずなので、やはり地球温暖化の影響だろうか。
<雪崩>
7/24と27にK2方面から、BCの一部に雪煙が舞う程の大きな雪崩が発生。雪崩の雪煙は遠く対岸まで届き、完全にABCへのルートを覆い尽くした。時間的に誰もいなかったが、歩いていれば大変なことになっていたかもしれない。

<メモリアル(慰霊碑)>
BCの右岸下流に、K2で亡くなった人のメモリアル(慰霊碑)がある。亡くなった人の遺品や名前を刻んだプレート等が何個も岩に取り付けられている。ここには登頂するまでは来るつもりはなかったが、一緒にアタックしようと言葉を交わしたニュージーランド人親子の遭難を受け、メモリアルへ食器に名前等を刻んだプレートを取付けに行くと言うので同行した。
<照明>
食堂テント内の明かりは、ガスボンベからホヤに直結して点灯する。ちょっと怖いが、慣れると温かいし悪くない。ボンベから直結して使うためには特殊なパーツが必要だが、それはスカルドのバザールに普通に売っている。おそらく一般家庭でも普段から使われているのだろう。
<黄金色のブロード・ピーク>
晴れているときの夕方、ブロード・ピークの山頂は黄金色に輝く。K2は方角的にここまで黄金色にならないので、この時ばかりはブロード・ピークに軍配が上がる。

⇒下山(K2BC~帰国)に続く