※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
2013年K2遠征その⑧_高度順化・C3設営
2013年7月14日

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7/7~7/10 天気が悪くBCにて停滞。また、これからルート工作の中心となっていくだろう他隊のシェルパ達と、今後のスケジュールやお互いの装備の確認、協力体制等について話し合う。最近はK2でも自分達でルート工作せずシェルパに任せることが多くなってきたようだ。今回も我々以外では、この後ブロードピークから転戦してくるニュージーランド隊、自力でフィックスロープを使わず登るというスイス隊以外は、全てお任せの隊のようであった。
(レポート:小谷部、写真・動画:栃木K2登山隊2013)
7/11 翌日からの回復予報であまり天気が良くない。しかし、高度順化が遅れている副隊長は、ABCで1泊しないとC1へ行けない状態なので、付添いの隊長と共に1日早く出発。また、夕方の定時交信でABCのテントが50cm程破れており、ココア、スキムミルク、お汁粉等がカラスに持ち去られもようとの残念な知らせが入る。

7/12 隊員4名でC1へ出発。なおハイポーターはC2へ荷揚げと前回時間切れで張れなかったテントを設営する為、1時間早く出発している。
セラックやクレバス等氷河の状態は、夏に向かってどんどん変化していく。毎回通るたびに、どこかしらルートが修正されていく。
ABCでハーネス、アイゼン等を装着し登り始めるが、この斜面を登るのは6回目。次登るときはうまくいけばアタックか。
尾根に上がったところで、ゆっくり上っていた隊長と副隊長を追い越す。
我々よりだいぶ遅れたが、副隊長も無事C1到着。1人調子が出ずルート工作にも加われなかったが、これで明日以降の高度順化がうまくいけば全員でアタックの望みはある。
他隊も続々と上がってきて、狭いスペースにテントを張って行く。
C2へ荷揚げとテント設営に行っていた我々のハイポーターがなかなか降りてこない。何か事故でも起こったんじゃないかと心配になったが、17時頃ようやくC1へ下りてきた。温かいミルクティーとバームクーヘンで労をねぎらう。また、C2の状況を聞くと上部はガスがかかり風も強く、スイス隊のテントが強風で壊されていたらしい。よって我々のテントも壊されないようにポールを抜いてつぶし、荷物をデポするだけでテントは張らなかったとのこと。かなり疲れていたようだが、彼らはこれからBCまで下りて行った。
7/13 朝起きると周囲にはガスがかかり思ったほど天気が良くない。我々含め各隊様子見でなかなか動く気配がなかったが、シェルパ達が動き始めたのをきっかけに、各隊同調して登り始める。
登るにつれ徐々にガスが切れ、天候が回復してきた。しかし副隊長は、100m程登ったところでやはりペースが上がらないため、自ら今遠征でのアタックをあきらめ下りて行った。2009年一緒にC4(約7900m)まで行った仲間だけに非常に残念だ。
現時点でBCにいる全隊がC2目指しているので、ハウスのチムニーも順番待ち。
C2はテントが込みあうので、無理やり不快な場所に張ることになるよりはと、C3へ少し遠くなるがハウスのチムニー下の平坦地にテントを張る隊もあった。
C2に到着すると、信じられないことに我々が整地して場所取りしていたところに他隊のテントが張られていた。先着したシェルパ達が張ったようなので抗議すると、スイス隊のテントを日本隊のと思ったなど、いろいろ言い訳してきたが、BCで状況説明していたので分からないわけがない。アタックでは彼らとの協力が不可欠だし、彼ら用ではなくクライアント用のテントなので、今すぐどかせと言うのも酷だ。そうすると、かわりの場所を整地すると言って、「グッドプレイス!」と指差したところが、壁際の狭いがやや平坦な場所。グットプレイスというなら最初からそこに張れよ!と怒鳴りたい。文句はあるが他に場所もないので仕方なく整地を始める。しかし雪は直ぐに氷のように硬くなり作業がはかどらない。しかも、息を切らしつつ休みながら結構開拓したと思った場所も、テントを広げると10~20cmくらい空中に飛び出していた。落ちそうで怖いが、これ以上の拡張は無理なので我慢する。
夕暮れのブロード・ピーク北峰。我々1班はルート工作でC2へ1回到達していたのでそのままC2泊としたが、2班は初めての到達高度なのでC2泊は明日以降とし一旦C1へ下りていく。
7/14 今日は朝から晴れ。シェルパ達がC3へルートを伸ばすのを追いかけるようにC3を目指す。また、今日から7000mを越えるので、ようやく特別に製作したファインポリゴン高所服の出番がやってきた!
C3へは、まずC2正面の壁を左側へ回り込み岩稜の左斜面を登って行く。そうすると、C2まではどちらかというとBCから見て尾根の裏側で見えなかったのが、尾根の表側へと出るので、登っている姿がBCからよく見えるようになる。
C2-C3間は全体的にさらに傾斜がきつくなり岩場も多く、よりアルパイン的なクライミングになっていく。ここのルート工作が出来たらかなり充実するのだが、標高が7000mを越えてくるだけに時間がかかる。よって高所で我々の倍以上の速さで動けるシェルパ達がルート工作をやるという限り、残念だが任せるしかない。
途中、ハウスのチムニーに続き、1ヶ所残置ラダーが出てくる。こちらは氷に埋もれることなく使えるのだが、足を掛けるとバランスが悪く無駄な体力を使うので要注意だ。
12時過ぎ、途中で我々を追い越して登って行ったスペイン隊が早くも下りてきた。話を聞くと、ルート工作するシェルパ達に追いついた時にC3までまだ3時間半かかると言われたらしい。彼らはテントを担いでおり、今日C3に張るつもりだったらしく時間的に無理と判断し下りてきたようだ。我々は高度順化のみの為、15時リターンと決めそのまま登り続ける。
標高が7000mを越えてくると、ただでさえ重い足取りがさらに重くなりペースが落ちる。ピッケルすら重く感じ体が動かない。今遠征初めての7000m越えなので仕方ない。焦らずずゆっくり登るのみ。また、ルート工作していたシェルパ達が下りてきたので状況を聞くと、残り1Pというところまで伸ばしたが、C3までは届かなかったとのこと。
2009年の記憶から、C3まで残り2P+α(15~30分くらいの歩き)と思われるところまで来ると、時刻が14時半を過ぎたので時間切れとしC2へ戻ることにする。C3は写真奥のスカイラインのさらに奥で、今回は見れなかったが、この先から今までとは一変して真っ白な雪の世界になって行く。

<C2以上(7000m以上)のレイヤリング>
トップス:L1アクティブスキン+L2メリノスピンサーモ+L3ドラウトクロー
    +ファインポリゴン高所服
ボトムス:L1アクティブスキン+L2メリノスピンサーモ+L3ドラウトクロー
    +ファインポリゴン高所服
ソックス:L1スキンメッシュソックス+L2メリノスピンEXPソックス
グローブ:毛手袋+エバーブレスアイスグローブ(特別サイズ)
    ※ファインポリゴンミトンはC3までは岩が多いため使用せず。
     C3から上部で使用予定。
その他:アルパインビーニー、ドラウトネックゲイター
    ※酸素マスク対応バラクラバビーニーはC3から上部で使用予定。
C2に戻ると時刻は17時半。非常に疲れたが、これ以上行動できないのでC2で泊まる。夜SPO2を測ると、48%の113。とうとう50%を切ってしまった。疲れたときは下がる傾向があるので仕方がない。高度障害の症状も無く心拍がまだ113程度に収まっているので大丈夫だろうが、明日は私だけC3を目指さず一旦BCへ戻ることにする。

<宿泊装備>
C1:ポリゴンネスト12×8+エバーブレススリーピングバッグカバー
   ※C1以下のウエアは着用したまま
C2:本来C1と同じだが、軽量化のため以下の通り高所服で代用
   ポリゴンネスト2×2+エバーブレススリーピングバッグカバー
   +ファインポリゴン高所服+ファインポリゴン像足・ミトン
   ※ポリゴンネスト12×8使わず、L3以下のウエアは着用したまま
7/15 C2から見る日の出。天気がよさそうだが、上部はガスの中で、居残りで再度C3を目指す1班2名と昨日C2に上がってきた2班2名、およびC3への荷揚げをするハイポーター3名はしばらく様子見。私はBCに残っていたハイポーター1名にABCまで迎えに来てくれるよう依頼しBCへ下山する。なお、天気が回復しなかった為、今日のC3への荷揚げは中止しハイポーターと1班2名は遅れてBCまで下山。

7/16 本日も天候回復せず。2班の2人も、C2から上部に上がるのをあきらめBCへ下山。
7/17-7/19 長期予報から7/27~7/30辺りでアタックが最適となりそう。よってアタック前の休養を考慮すると、もう一度C3へ登る余裕がない。また、C3の睡眠から酸素を使うので、高度順化はC2泊までで終了とし隊員は休養に入る。

7/20-7/21 今日、明日でシェルパ達がC3へルートを伸ばすというので、ハイポーターがC3設営と荷揚げに行き、無事C3を設営。これでアタックへの準備ができたが、C3手前は膝~ももラッセルだったらしい。BCで見る限りそこまで積もるほど雪が降ってないように思えたが、下手すると上部は2009年の時より多いかもしれない。

⇒登山編(アタック)に続く