※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
2013年K2遠征その⑦_ルート工作・C2設営
2013年7月6日

前の記事:2013年K2遠征その⑥_ルート工作・C1設営

7/4 前日のC1設営報告を受け、C2へのルート工作のためBCを出発。なお、C1での宿泊が可能になったため、今後ABCは装備や食料の保管がメインとなり、基本的にBCから一気にC1へ上がることになる。
(レポート:小谷部、写真:栃木K2登山隊2013、小谷部)
ABCにてデポしていたギア類、シュラフなどの宿泊装備、食糧の一部を回収。ハーネス、アイゼン等の登攀具を装着し、重くなったザックを担ぎC1を目指す。
フィックスロープは登りだけでなく下りにも使用するため、エイト環等の下降器が着脱しやすいようにピンと張らずにゆとりを持たせておく。そのため、登りはじめはロープのたるみでアッセンダーがスライドせず、ロープの自重で下方向に荷重がかかるまでは両手を使い送り出しながら登らなければならない。
今回登る南東稜は、K2で一番登られているノーマルルートにあたる。しかし、ABCから見上げるような急斜面が続き、平らな場所が皆無といってよいほどない。よって、いつまでも見下ろすとABCのテントが見える。
C1までは雪が多く、基本的には雪面の登り。しかし、その下は雪に隠れた岩が結構あり、不意にアイゼンが滑ったり、雪が解けて露出すると崩れて落石となったりして意外と危ない。
そして、2班がルート工作した場所まで来ると、支点に見覚えのあるアングルハーケンを発見。
緑のテープシュリンゲのついたアングルは、2009年北日本隊で登った時に打ち込んだ私のアングルハーケンだ。フィックスロープは流されて跡形もないのに、よく残っていたものだ。
ルートは次第に岩稜となる。フィックスロープに沿って右から岩稜を越え反対側に回り込む。
右から岩稜に登ったところ。
岩稜を回り込んだところ。岩稜左のルンゼ状の雪面を登る。C1まであと3ピッチ。
C1への最終ピッチ。先ほどのルンゼ状の雪面を2ピッチ登り、再び岩稜を越え右側の斜面を登る。
C1到着。雪が少なく地面が露出し、テント等の残骸が大量に見え汚い。なお、2009年の時は地面が見えなかったので、ABCで予測した通りに前回より雪が少ないことを確認。
2009年の北日本隊(北日本海外登山研究会 2009年K2登山隊)での遠征時のC1。今回と比べ雪が多いのが分かる。
C1(標高約6,090m)における私のSPO2と心拍。他の隊員が80%台前後なのに対し55%と飛びぬけて低い。SPO2とはパルスオキシメーターで測定する血中の酸素飽和度で、高度順化できていない人、高所に弱い人ほど低くなる傾向があり、心拍と合わせ高度順化の指標の1つとしています。なお、私のSPO2は55%と低いが、心拍がまだ100程度で高すぎず、顕著な高度障害の症状も出ていないことと、2009年も同様の数値のまま行動できていたことから、注意は必要だが大丈夫と判断。
ちなみに、2009年にはBCからABCへ高度順化で往復行動後した後に昼寝し、起きた直後に測定したところ30%台の数値をたたき出したこともある。
7/5 本日も良い天気。C1まで来ると、だいぶ周囲の山が見えるようになってくる。それにしてもカラコルムは尖った山が多い。
C2へのルート工作1P目。まずは隊長がトップで登る。一昨日C1を設営した2班は、1Pだけロープの荷揚げを手伝い一旦BCまで戻ることになった。
C1からC3までは岩場が多く、残置ロープもかなり残っている。残置ロープはルートの目印になるが、たまにずれた場所にもあったり、残っていないところもあるので、私の記憶を頼りにルート工作を進めていく。
2P目、1P終了点には古いロープが大量にぶら下がっているが、ほとんどが雪に埋もれ使えない。上に伸びる残置ロープも無く私の指示で1P同様隊長がトップでロープを引っ張っていく。
ビレイ解除、ロープ固定のコールが届き登って行くと、2P目終了点手前でハーケン1本打ち込みロープを固定していた。どうやら終了点が分からずロープも残り少なかったので、終了点までロープが足りるか不安で仮固定したとのこと。場所も狭いので、私が残置ロープを使って終了点まで登りロープを固定した。そして、これから先はルートを知る私が基本的にトップでロープを伸ばすことにする。
3P目は少しタイトだが残置ロープが使えたので、そのまま登る。 なお、タイトすぎて帰りの懸垂で下降器の着脱に苦労したので、翌日修正することにした。
4P目、ロープに沿って正面の岩の間を、逆くの字のように抜ける。
5P目、残置ロープが途中で雪に埋もれているのでロープを引っ張っていく。写真正面手前にある岩の左を抜け、その奥の大岩の基部を右へ回り込むと、狭いが傾斜が緩く比較的くつろげる場所となり支点がある。距離が短くロープが余るが、この先のピッチが長いので、ここでまででフィックスを固定する。
6P目、ここは2009年いやらしい登りで苦労したのでよく覚えている。雪面のすぐ下が、カチカチのアイス面か岩となっておりアイゼンがスリップして登りにくいのだ。しかも距離が長い。何もなければ怖い思いをして登るところだが、幸い残置ロープが使えそうだったので、残置ロープにアッセンダーを掛け100mロープを引っ張っていく。 終了点も確認し、途中の結び目によるアッセンダーや下降器の架け替えが面倒だが、そのまま使えそうだ。先はまだ長いので、引張り上げたフィックスロープは節約のため回収した。
7P目、岩は無いが残置ロープは雪に埋もれて使えず。ここで初めての高所登山だが、BCでSPO2が90%越えの若手で体力バリバリのメンバーが、リードでどこか登りたいと言っていたことを思い出す。 私もSPO2が低く苦しい所でもあるので、体力温存のためも技術的に問題の無い体力勝負のルートはトップを任すことにした。
8P目、岩稜を左から巻くように登る。最後は岩を登るが階段状だし、残置ロープも使えたので引き続き若手にトップをを任す。
9P目、残置ロープは使えそうなのだが、中間で一部雪に埋もれてしまっている。K2へ持ってきたフィックスロープは3000mと限られているので、出来るだけ残置ロープを使い節約したいところだ。そこで若いパワーで残置ロープを使えるように掘り出しながら登ってもらった。
10P目、ここから岩稜となるので再び私がトップに立つ。残置ロープが数本垂れ下がっているが、どれが信用できるかわからない。引張ってテスティングし、見える範囲で良さげなロープを選び簡易保険程度の気持ちでアッセンダーをかけて登って行く。
11P目、岩稜の後半部分。先ほど同様何本もロープが垂れ下がっているが、相変わらずどれが信用できるかわからない。使えそうなロープを選び先ほど同様にアッセンダーをかけて登って行く。 ロープの損傷状態を確認しながら登って行くと、尖った岩の多い岩稜ということもあり所々損傷が見られたが、損傷部分を避けるように別のロープで補強されていたので十分使えそうだった。ただ、補強のためロープが交差していたり複数結ばれているため、アッセンダーや下降器の架け替えが頻繁になり面倒なのでフィックスロープを新たに固定した。
12P目、岩稜が壁にぶつかる11P目終了点から、真っ直ぐ上方と右側のバンド方向の2方向に残置ロープが伸びている。 2009年は右側のバンドから巻いているため、今回も直上ではなくバンドを使って右側に回り込み、急斜面を少し登って尾根に戻った。
13P目、平坦で数メートルしかないので残置ロープのみを使って移動。

14P目、左上するルートに同じような残置ロープが3本下がっており、使えるロープの見分けがつきにくい。また、C2まではまだ10ピッチくらい残っているが、時刻は14時を過ぎてしまい時間切れの模様。風も出てきて寒くなってきたが、もう少し伸ばしたいと話していると、それならとロープ等の荷揚げで我々についていたハイポーター2人が残置ロープを掴んで先に登って行ってしまった。
15P目、引き続きハイポーターが残置ロープにアッセンダーを掛け、ゴボウで先に登ってしまった。我々も残置ロープを使って追いかけ狭い終了点に到着すると、ハイポーターは担いできたロープ等を終了点に縛り付けてデポし、さっさとBCへ下りてしまった。 我々も今日はこれまでとし、残ったロープをデポし全ピッチ懸垂でC1へ戻る。また、懸垂でC1へ戻るとき3P目は何となくわかっていたが、8P目もタイトで下降器のセットに苦労したので、明日補修することにした。
7/6 今朝の私のSPO2は55%、心拍108で高度障害の症状の無くほとんど変化なし。C1には他隊のテントが増えていたが、誰も泊まっていなかった。
7時に出発し、10時20分ごろデポ地点に到着。
16~17P目、ルートができると、さすがにSPO2が高く体力もある若者は早い。残置ロープが使えそうだし、先に到着して準備を進めていたのでトップで行ってもらう。
斜面を登り尾根に出たところで終了点があったが、まだロープに余裕があり残置ロープも引き続き使えたので、そのまま尾根沿いに壁の基部手前のまで行ってもらう。
18P目、短いが岩壁となるので私にトップを交代する。また、17ピッチの終了点が岩にロープを巻きつけているだけなので、壁を登る前に補強のため岩壁基部まで行きバックアップの支点を取る。
バックアップを取ってから壁の基部をトラバースし凹角を登る。残置ロープが何本も垂れ下がっているが、岩で擦れて損傷している可能性が高い。一応残置ロープにアッセンダーをかけてはいるが、ロープに荷重をかけないよう丁寧に登る。
凹角を登ると楽に立てるテラスに出る。テラスからは正面の壁を登るが、私が登った後にロープの振れ留めのため残置ハーケンで固定するよう指示する。
テラスからは垂直の壁を1、2歩登り、つかみどころのないいやらしい段差を越えると傾斜が緩くなる。ここまで登ると一息つける。
緩傾斜帯は登るのは楽だが、浮石が多く落石が怖い。一歩一歩慎重に登り、再び現れる壁の基部でピッチを切る。
19P目、テラスを左へトラバースし、2,3m程の垂壁を越えたテラスに残置ロープがごちゃごちゃついた支点が有る。短いがこの先ロープが屈曲し岩角に当るのでピッチを切る。
20P目、支点の有る段差を越え、さらに2m程の外傾ぎみの階段状の段差を越えると、浮石だらけの緩斜面に出る。 幸い、落石はルートから外れて落ちるので心配ないが、終了点の大岩まで距離があり、あまり気持ちいいものではない。また、この緩斜面に出るとハウスのチムニーの岩壁が見え、C2までもう少しだ。
21P目、支点の有る大岩を右側から巻いて上がると、テントも張れる平らで広い尾根になる。ここでBCから荷揚げで追いかけてきたハイポーターに追い付かれる。
22P目、目の前の段差を越え雪面を登り、正面の残置ラダーの有る壁を登る。時刻はいつの間にか13時を過ぎており、テントを設営して下りることを考えるとあまり時間的余裕がない。そんな状況なのでハイポーターも「オールドロープ」を連呼し、残置ロープを使って早く登れとせかしてくる。しかし、肝心の残置ロープは途中で雪面に埋もれ使えずしばらくフリーで登る。 再び残置ロープが雪面から出てきたところでアッセンダーを掛け残置ラダーも使い壁を登ると、左側にチムニーが姿を現す。チムニー入口に支点があるのでここでピッチを切りロープを固定した後、時間短縮のため後続が登ってくるのを待たず、残置ロープにアッセンダーを掛け、ビレイなしでチムニーを登ることにする。
23P目、残置ロープは数本あるが、程度は違えど全てムニー内の氷に埋もれている。その中で2ヶ所氷から掘り出せば使えそうなロープを選択し登り始める。最初の氷は結構簡単に砕け、あっさりロープの掘り出しに成功したが、二つ目の氷は硬くなかなかロープが掘り出せない。残置ラダーにセルフを取り、何回も休みながらロープを傷つけないようにアックスを振る。正直、この掘削作業が今回の遠征で一番きつかったかもしれない。なお、残置ラダーは上部がかなり氷に埋もれており、多少ホールドとして使えるも足をかけるとバランスが悪くほとんどあてにできない。特に上部は傾斜がきつくなりチムニーも狭くなるので、フィックスロープにアッセンダーを掛けゴボウ状態で登るにしても、丁寧に岩や氷に立ちこんで登らないとかなりキツイ。まさに前半の核心部だ。チムニーを抜けたすぐ先に支点があり後続を待つ。
24~25P目、ここからC2までは雪面となるが、ロープを掘り出しながらのチムニー登りで疲れ果て足が進まないので、まだまだ元気な若手とハイポーターに先に行ってもらう。途中の岩で1回ピッチを切り、テントの残骸が見えればC2だ。
なおC2には、フィックスロープを使わずアルパインスタイルで登ると言っていたスイス隊のテントが張られていたが、スイス人はBCに下りていてテント内には誰もいない。
C2からBCを見下ろす。氷河も上から見ると川であることが良くわかる。なお、手前のK2方面から氷河中心部へ広がっている白い塊はデブリだ。毎日のように発生する雪崩の多くは斜面末端くらいまでで氷河内部まで届くことはないが、たまに発生するデカいものは氷河内部まで到達することがあり、すごいものだと対岸まで届くこともあるらしい。
C2は傾斜があり正直平らとは言えない。壊れたテントが積み重なって土台となり比較的平らな天場を作っている。当然いい場所は限られ早い者勝ちだ。これがC2に早く来たかった理由の1つでもある。スコップでは歯が立たないカチカチの雪面は、アックスで削り整地する。
テントは風で飛ばされないように、氷のように硬い雪面にはペグ替わりにアイススクリューを使い、テントの上にロープを回して押さえつける。2張り立てる予定だったが、1張立てたところで15時半を過ぎてしまい時間切れ。整地だけして場所取りで持ってきたフィックスロープやテントをデポして下山するが、このデポによる場所取りが後でちょっとしたトラブルを招く。
時間が遅いので、通常ならC1か少なくともABCに泊まるべきだった。しかし、1度だけだが2009年に行動後SPO2が30%台まで落ちた経験から、今の疲労度を考えると今日C1やABCで泊まるのが怖かった。そのため他2人はC1泊まりでも、私はBCまで下りたいことを主張し下り始める。結局は、明日以降の天気が良くないので全員BCまで下りることにしたが、セラック帯に入るところで暗くなり始めライトを点灯。真っ暗になると先が見えずルートが分かりにくい上、非常に危ない。ゆっくり休みながらハイポーターの案内でBCを目指していると、先方からライトがチカチカ見え、コックが暖かい飲み物を持って迎えに来てくれた。その後もゆっくり歩き続け22時頃ようやくBC到着。他隊の人も含めK2のBCにいる人全員に心配をかけてしまい申し訳なかった。

<C1-C2間のレイヤリング>
トップス:L1アクティブスキン+L2メリノスピンサーモ+L3ドラウトクロー
+L5エバーブレスアルマ
ボトムス:L1アクティブスキン+L2メリノスピンサーモ+L3ドラウトクロー
+L5エバーブレスアルマ
ソックス:L1スキンメッシュソックス+L2メリノスピンEXPソックス
グローブ:毛手袋+エバーブレスアイスグローブ(特別サイズ)
その他:アルパインビーニー、ドラウトネックゲイター

⇒登山編(高度順化、C3設営)に続く