※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
頚城・滝ノ内沢遡行
2012年9月22日

頚城・鉾ヶ岳に突き上げる滝ノ内沢は、その名の通り滝また滝の連続の厳しさを凝縮したようなゴルジュを持ち、沢登りとしては最難の課題の一つと言えるだろう。
過去3度計画しながら、いずれもいずれも全く天候に恵まれず、入り口にも立てていなかったこの課題、ようやく行くことができた。
とはいってもやっぱり天気には恵まれず、2日目からずっと雨。2日目の夜には増水でキャンプ水没して体育座りの夜を過ごし、瀑流となったゴルジュを横目に6時間の藪こぎして命からがらエスケープすることとなった。
(レポート:相川/写真:相川、木下)
入渓点からはただのヤブ沢にしか見えない。少し遡行すると、前方に岩壁が見えてくる。
岸壁に近づいてみると、待っていたのは一条の滝40m。この滝を登れて初めて、この沢に挑む資格がある、関門のような存在だ。
この滝の登攀はほぼアメリカンエイドだ。カムはほとんど使えないが、丁寧にネイリングしていけば、それほど難しいことはなかった。ブランクセクションは、かなり腐りかけてはいるが、残置ボルトが使える。
一条の滝の上は、登りごたえのある小滝が続く。チムニー状の小滝、2条のチョックストーン滝と連続で越える。
洞窟状の5m滝。直登は困難でここは再びネイリング。
上越らしいV字谷にひたすら滝をかけていく。巻きも非常に悪いため、基本的にはどんどん直登していくのが最善だろう。いくつかかかる滝の先に、大きな滝が見えてきた。
広場のような開けた場所にかかる17m滝。フリーでの登攀は困難。といって巻けるような地形でもなく、エイドで抜けるしかない。
ほとんど腐りかけたボルトを2本ほど打ち替え、あぶみの連続でルートを伸ばす。途中傾斜が緩みかけるところで左に数メートルトラバースすると、その先はフリーで抜けることとができた。
そろそろ、ビバークポイントを考えなくてはならない時間だが、この谷はそんな場所はほとんどない。やや焦り始めたところで、洞窟状の8m滝に前方をふさがれる。左のカンテ状を登って、ブッシュから懸垂で降りたところに、巨大なポットホールが埋まったようなわずかな河原があった。ギリギリセーフでヘッデン遡行を逃れる。
落石を避けて小さなハングの下でオープンビバーク。しかし夜半過ぎに雨が降り出した。開発中のスリーピングバッグのおかげで、雨にたたかれつつも濡れることなく、それなりに眠ることができた。
天気予報に反して、翌朝も雨の中、遡行を開始する。いくつか滝を越えた先で迎えてくれたのは、両手を広げれば届きそうな、大地を断ち切ったような美しいゴルジュだ。中は見た目ほど悪くなかったが、ここで増水に会うことは考えたくない。
溝状ゴルジュを先には釜を持った7m滝。予想されていた最後のネイリングポイントだ。左岸をあぶみトラバースで抜ける。
しばらく、穏やかな渓相になった後、現れるウバ滝35m。この滝は、左手のルンゼ状から容易に巻くことができた。
ネイリングで越えた4つの滝は、過去の記録から予想していたし、それなりの心構えで挑んだので、想定を超えるような難しさはなく、むしろ楽しんで登ることができた。
しかしだんだんわかったきたが、この沢が厳しいのはそれ以外に無数に続く小滝群が、どれも一筋縄ではいかず、休む間もなく体力と精神力を削っていくことにあるかもしれない。昨晩からの雨はやむことなく、微妙なフリクションのためちょっとした登りでも緊張を強いられる。
松尾ベンとの分岐の20m滝。右の草付きから巻きにかかるが結構微妙なトラバースだ。コンテでの行動を終え、河原の石に踏ん張ってビレイ体制に入ったところで、強烈にロープにテンションがかかった。
後続がトラバース中に灌木が折れ、草付きの中を20m近くぶっ飛んだらしい。肩がらみでの体重差20kgのマジ墜落はヤバかった。しばらく反応がないので焦るが、なんとかユマーリングで登り返してきた。大きなけがもないようで、ホッとする。
その先のわずかな平地でツエルトをタープ状に貼り、降り続く雨の中、ビバーク地とする。
アクシデントは、夜半過ぎに起こった。
雨脚が強まり、背中の下の水溜りがかなり広がってきたな、と思った数分後キャンプ地に一気に水が流れ込んできた。
あわてて荷物をかき集め、わずかに高い草地に避難する。しかし、ここより高い場所はほぼない。これ以上増水が進めば本当にヤバい。
わずかな雨脚の変化にも神経をとがらせながら、ツエルトをかぶってずぶぬれのまま、体育座りで夜を過ごす。明るくなってみると、ビバークポイントは完全に流れの中だった。
少し先から始まるゴルジュは、奔流となっていた。遡行継続という選択肢はもはやない、いかに脱出するか、それを考えなくてはならない。沢沿いに少し下ったところから、右岸側の尾根になんとか上がれそうであったことを覚えていた。昨日とは全く違う様相の沢を下り、尾根に強引に這い上がる。6時間の苦しい藪こぎの後、登山道に出た時は心底ほっとした。
完遡とはならなかったが、主要部分はすべて登って9割方終わっている。まあ、良しとしよう。
ホッとしたのもつかの間、鉾ヶ岳の登山道は一般道としてはありえないだろう、というレベルの急斜面の泥道。こんな天候の日に沢靴で下るのは、不愉快を通り越してヤバすぎる。
二人とも、何度も転倒。一度は転んでそのまま2回転。一度は、急なつづら折れのカーブ手前で転倒して、危うくそのまま谷に転がり落ちていくところだった。
悪態をつき、泥だらけになりながら、ようやくゴールの島道鉱泉にたどり着くことができた。