※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
大台ケ原 大蛇嵓P3南壁「ここにもあったぞエルキャピタン」登攀
2012年10月13日

忘れられた大岩壁・大台ケ原 大蛇嵓P3南壁にある 「ここにもあったぞエルキャピタン」ルート。
発表された記録を見る限りでは、1980年代初めに第二登・フリー化が行われて以来、30年も再登を見ないルートだ。
何度も計画しては流れた課題のひとつだった。
強いパートナーの力もあり、2日連続で残業しながらもなんとかオールフリーで完登に成功。
(メンバー:相川、板倉、藤巻、木下 レポート:相川、写真:木下、相川)
まずはアプローチから一筋縄ではいかない。大蛇嵓展望台の先から5ピッチの懸垂して、ようやく大蛇谷の枝谷に降り立つ。大蛇谷の合流点でさらに一回懸垂して、大蛇谷へ。まだまだここからは岩壁は全く見えない。
正直このアプローチは敗退時の登り返しなどを考えるとなかなか厳しい。一本南のもう少しなだらかな尾根をアプローチに使うことも検討の余地ありだ。
もう一回の懸垂を交えて大蛇谷を下っていくと、ようやく眼前に巨大な岩壁が。穂高・屏風岩などと比べてもそう遜色のないスケール感。「まあ、登れるでしょ」って思える屏風岩などより、威圧感はずっと上に感じられる。
この時点ですでに午後。この壁に2日で挑むのは厳しかったか。
1ピッチ目 60m IV
初日は、ほぼ空身で、延ばせるだけロープを伸ばしてフィックスを貼る戦略だ。まずは取り付きを探すのに一苦労。ここしかないか、というルンゼを見定めて取り付く。
どうやら正解のようで、60mロープをいっぱいに伸ばしてテラスへ。
2ピッチ目 35m 5.10b PD
さて、核心であろうと思われる2ピッチ目。今回のメンバーの一人木下は、以前このピッチで敗退している。その経験もあって、頭上に揺れるピナクルとスリングは間違いであることが分かっていた。
藤巻が渾身のリードでおそらくこれしかない、と思われる左への大トラバースに活路を見出す。前半部はプロテクションはハーケンしかとれず、ハーケンを打ちながらのフリーを見事に登り切った。
3ピッチ目 25m 5.8
3ピッチ目は見事なクラックだ。しかし、夕闇は迫り時間との競争となる。
前半は快適なハンド。途中広がるところをレイバックで素早く抜け、上部の破砕帯に入ったところで足元もほとんど見えないくらい真っ暗に。早速の残業確定だ。
不安定な岩が積み重なったようなところであったが、何とか支点を作ってロープをフィックス。
この日は取り付きまで降りて、ハングの下でビバークとした。
2日目はユマーリングから始まる。
今回は(これは反省点であるが)ルートを再開拓するようなつもりでかなりの量のギア(電動ドリルなども含む!)を上げていた。昨日は良かったが今日はこのギアをすべて上げなくてはならない。
検討の結果、荷物を三つにわけ、リードの後でフォローが回収。そのまま2人で荷揚げに入り、残る二人は荷物を背負ってユマーリングというタクティクスで臨むことにした。
再度の3ピッチ目。改めて登ってみると、破砕帯のトラバースで雨あられと下に落石を落とすことになることが判明。一つの岩が砕けてビレイ点に降り注ぎ、肝を冷やす。
4ピッチ目 10m 5.9
快適なフェース、ではあるがランナウト気味。リードはなかなか怖そうだ。
5ピッチ目 25m 5.8+
顕著なコーナークラックを登る。下部は緩く、ハンドジャブがバチ効きだが、上部ほど立ってきて、クラック内もスナスナに。2人がやっと立てるくらいのテラスに、気合で登りきる。
6ピッチ目 20m 5.8
出だしのオフウィズスをステミングでこなして、クラックやフレークを絡めて登る。巨大な浮き石が多く恐ろしい。後続がユマーリングで登る途中で一抱えもある岩が外れて落ちて行ったとか。窮屈なテラスでビレイ。
7ピッチ目 40m 5.10a
6ピッチ目終了点から岩を落とすと、岩は全くバウンドすることなく取り付きまで落ちていく。ここまでの平均斜度は90度オーバー。ルートはその弱点を実にうまくついている。
このピッチも出だしからかぶっており、一見してきびしそうであるが、一段下がって5mほど左にトラバースすると、クラックが上につながっていた。初登者のルートファインディングのセンスは素晴らしい。
クラックはフィンガーサイズから始まるが、途中の広がるあたりでスカスカで今にも折れそうな大きな木がクラックに挟まり実に邪魔。途中ビレイ点らしきものが出てきたが、そのまま直上して傾斜の緩むテラスまで一気に伸ばす。
8ピッチ目 15m III
8ピッチ目はブッシュの中の容易な登り。これでほぼ終了かと思ったが…
9ピッチ目 30m 5.8R
最後のフェースが以外と厳しい。出だしにボルトが打たれていたが、その先が判然としない。左のカンテ近くのリス沿いに残置が見られたが、フリーで行くならば緩傾斜だがほとんどピンの取れない右手のスラブだろう。落ちたらグラウンド必至のピッチをこなしてようやく樹林帯にトップアウト。
トップアウト時で16時を回り、残業は確定。結局展望台帰着は21時を回っていた。
下山も一筋縄ではいかず、P3トップ近くのトラバース、P4手前のルンゼ、P5の登り、最後の展望台に向かっての登りでロープを出すことになった。
<技術メモ>
今回、大量にギアを上げてしまったので、ビッグウォールスタイルに近い形での登攀となったが、2名程度でのリードアンドフォローでギアも絞り込めばもっとスピーディに登れるだろう。節理が十分あり、ボルトは使わなかった。
絞り込むなら、3番までのキャメロット2セット、4番ひとつ、スモールカム1セット、薄歯ハーケン8枚、ナッツ程度。
今回、土日の2日で登ったが、3日あったほうが安心。
トポを作成しました。