※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
紀伊半島 ワイルドクライミングツアー
2010年11月20日

  11月の連休は1日休みをもらって4連休に。紀伊半島の、大滝などワイルドな岩場をめぐるクライミングツアーに出かけた。
(レポート:相川、写真:相川、橋本、木下)
<11/20 1日目:備後川 ナル谷大滝>
一本目は、ナル谷大滝。
池原貯水池に注ぐ備後川や、坂元貯水池の周辺は、大滝を持つ谷が多い。ナル谷大滝は、車道から見える2段100mの見事な滝。登られてはいると聞いているが、手軽に取りつける割には記録を見たことはない。
 
  前日の雨で、壁は濡れていた。乾くのを待って、昼過ぎに動き出す。下に立って見ると、なかなか見事な滝。正面からはかなり厳しく見えたが、近くに来ればいろいろと弱点は見える。流れの左から登るラインがなんとかなりそうだ。
1ピッチ目は、ややプロテクションを取りずらいことを除けば乾いた快適なクライミング。IV-くらいか。1ピッチ目のビレイ点で見つけた、ほとんど朽ち果てた古い残置ハーケンが、この滝の中で、唯一の残置物。初登気分のクライミングを楽しむことができた。  
  核心は2ピッチ目。傾斜が強く、弱点と思われるルートを取ると、メインストリームではないが、水流を横断しなくてはならない。
フラットソールであるし、時期的にも水は浴びたくない。まずは直上して、かぶった壁を越えているルートにトライしてみた。
被った部分の抜けが非常に悪く、このルート取りは断念。諦めて、右から水流を横断するルートを取ることに。弱点とは言っても傾斜はかなり強く、なかなか微妙な登りを強いられた。Vくらいか。安定したテラスまで登ってピッチを切る。  
  3ピッチ目は初め左のブッシュに入り、モンキークライムで右上して、ぴったり落ち口へ。
2段目の大釜を持った30m滝。傾斜は緩いが、滑って見た目よりは微妙だった。登り終えたときはすっかり暗くなっていて、暗闇の中の懸垂下降となった。  
  <11/21 二日目:大峰山脈 池郷川左岸 石ヤ塔>
 石ヤ塔とは、険谷で名高い池郷川の左岸にあり、浸食された急峻な斜面に林立する岩峰群が日本離れした景観を作り出しているエリアだ。近くには、他にも前鬼、白川又などの名渓が集まり、関西で遡渓を志す者には、なじみ深い場所だろう。
 周辺の沢と比較して、まだまだ取りつく者は少ないようだが、石ヤ塔の筆頭である高さ150mほどある第一岩峰をはじめ、いくつかの岩峰にクライミングルートが拓かれている。いずれも自然のクラックを生かして、最小限のボルトの使用に抑えられた、開拓者の心意気を感じる豪快でワイルドなルートだ。
 池郷林道途中にある林道作業用モノレールがアプローチルートの目印。急斜面の作業道を下り、林道作業用のつり橋を渡る。橋から良く見えるのが第一岩峰。こんなすっきりとした岩峰は、日本にそうないだろう。沢登りでは何度も遡った、池郷川を見下ろしながら川沿いの踏み跡をたどり、1時間ほどのアプローチで石ヤ塔の基部に到着する。  
  第一岩峰は、中間部の広場を境にブッシュの多い下部岩壁と、すっきりとして傾斜の強い上部岩壁に分けることができる。下部はワンポイントでIV程度のクライミングがあるが、ブッシュ登りとコンテを交えた4ピッチで、上部岩壁の起点となる広場に到着する。
広場はほっと一息つける場所だが、ここから眺める上部岩壁はなかなか壮観。すっきりとした被り気味の岩に、幾本もの顕著なクラックが、クライマーを手招きしている。まず目立つのは右手に見える「ノーマルルート」のチムニー。左手の凹角からまっすぐ直上するのが、「ヒラニア・ガルバ」へ続くクラックだ。このルートは、第一岩峰を真っ二つに割る大チムニーをたどる名物ルートで、いずれぜひ登ってみたいものだ。  
   今回向かうのは「Stoned」というルート。左手の凹角から取りつき下向きの大きなフレークを目指して左上して行く。フレーク下をトラバースし、短いハンドクラックを登ると、立木のあるテラスに到着。見上げると2本の見事なワイドクラックが走っている。この先が、ルートの核心。
 あまり慣れていないワイドクラックに苦しみつつじりじりと登る、幸い、このルートはクラック内のホールドを拾いながら、ワイド技術を使わなくても結構登れる。しかしながら中間支点は手持ちのカムのみ。ほとんど大型カムしか入るところがないため、大ランナウトを強いられ、気の抜けない登りが続く。壁がすっきりしているため、眼下はるか下の池郷川までひと続きに見え、すごい高度感を感じられるところだ。  
   大型カムが尽き、途中の立木のあるテラスでいったんピッチを切る。なかなか恐ろしい離陸をこなし、その先は一本になったワイドクラックに半身はまり込みながらよじ登る。
最後の短いクラックを登って、池郷川の流れを眼下に岩峰の頂上に立った。まさに、鳥とクライマーしか、立つことのできない場所。見ることのできない景色。  
  頂上にもボルトがないため、ビレイにカムが必要。このルートを通して、一本のボルトも見ることはなかった。このようなすばらしいルートを拓いた、開拓者に敬意を表したい。
空中懸垂を繰り返す下降もなかなか楽しい。  
  <11/23 4日目:熊野・楯ヶ崎 海金剛の壁>
雨で停滞の翌日の4日目、次のターゲットの楯ヶ崎へ。
楯ヶ崎は、柱状節理の発達した見事な壁が海から直接せり上がった、熊野を代表する景勝地の一つ。付近には同様の(より規模の大きい)柱状節理の壁が発達しており、今回はその一つ、海金剛と呼ばれる岩壁にトライした
地図を読みつつ、急斜面を低木につかまりながら下降し、海辺に降りる。陽光降り注ぐ非常に明るい雰囲気の岩壁で、その場でのんびりするだけでも、気持ちがいい場所だ。晩秋の今の時期はクライミングに最高だろう。  
  一ピッチ目、スラブ状の岩を右上して行く。クライミング自体は難しくはないが、プロテクションが取りにくい。
2ピッチ目、傾斜がきつくなる。さまざまなサイズの短いクラックをつなぎ、ピナクルをよじ登っていく、なかなか楽しいピッチ。
最後の巨大な将棋の駒のような岩の基部の微妙なトラバースが恐ろしい。
 
  眼下で、白波がはじける。
素晴らしい絶景との出会いも、大きな楽しみだ。  
  最終ピッチは、天空に向かって伸びる一筋のクラック。
登った人がみな口をそろえて、こんな見事なクラックはなかなかないという、そのピッチを楽しみに来た。
ハンド~シンハンドサイズが30m近くも続く。シンハンド区間はやはり一筋縄ではいかず、苦戦するが楽しいクライミングだった。手の小さい女性では、全区間バチ効きのクラックだとか。
クラックを登りきると、巨大な塔のてっぺんにいることに気づく。最後は塔と壁の間の恐ろしい隙間をひとまたぎだ。
 
  終了点からは、踏み跡と登山道をたどって、すんなり国道に戻ることができた。