※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
紀伊半島 大台ケ原・中ノ滝登攀
2009年10月24日

  大台ケ原に源を発する、東ノ川にかかる2本の大滝、西ノ滝と中ノ滝。
そのうち、落差250mを誇る、関西最大の滝である中ノ滝の登攀にトライ。紅葉に包まれながら、全9ピッチの快適なワイルドクライミングを楽しんだ。(レポート:相川、写真:橋本、相川、川崎)
このエリアは西大台利用調整地域に属し、立ち入りにあたっては事前の申請が必要だ。
この手続きは電話と郵送ベースで行う必要があり、かなり繁雑。
当日朝は、事前レクチャーを受ける必要があるが、これを受けると大台ケ原の駐車場出発が最速でも8:00になってしまう。
制度開始以来、想定している入場者の上限に達したことはないそうで、保護と利用のバランスがとれているとは言い難い状況だ。事前・当日の手続きともに、改善を望みたいところだ。 
※クライミング目的でも、申請すれば許可は下りる。違反入場者に対する取り締まりも厳しく行われているので、くれぐれも無断立ち入りは行わないこと。
 
  アプローチは、シオカラ谷つり橋を経由し、滝見尾根を下降する。滝見尾根は比較的踏み跡が明瞭であるが、若干わかりにくいところもあり、しっかりと地図を読むことが必要だ。
滝見尾根からは、西ノ滝、中ノ滝の2大長瀑を望むことができる。右の滝が中ノ滝だ。  
  滝見尾根から東ノ川に降り立った場所は、西ノ滝の正面。そこから巨岩を乗り越えて15分ほどの遡行すれば中ノ滝の直下に達する。
今回、メンバーは5人。2人と3人の2パーティに分かれてそれぞれでリード、フォローで登ることにした。準備を終え、登攀開始は10:00となった。
【1P 30m III】
中ノ滝は、大きく分けて3段からなり、まずは下段の登攀だ。
疎らなブッシュの中を直上し、かぶった壁に頭上を抑えられたところで、左にトラバース。カンテを回り込んだところにボルトが3本打たれていたので、ロープの流れも考慮してここでピッチを切ることにする。藪がうるさいが登り自体は容易だ。
この場所は明瞭なビレイ点があったが、全体としてはビレイ点もランニングビレイも乏しく、ハーケン、カム、ナッツ類の携行と支点工作の技術は必要だ。
 
  【2P 45m III】
2P、3Pはすっきりとした岩の快適な登攀だ。全体として階段状で、難しいところはない。ラインも何通りかとれるだろう。ロープ一杯に2ピッチ伸ばしたところで、下段落ち口に達することができた。
  【3P 45m III】
下段落ち口の大テラスは、ちょっとしたグラウンドくらいの広さがあり、コンテで中段の滝の登り口まで移動する。
このテラスは広いが、それなりに傾斜と起伏があり平らなくつろげる場所はあまりない。
 
  【4P 45m IV】
既に100m以上登り、並みの滝であればとっくに抜けているところだが、この滝はまだまだこれから。
中段の滝は下段と比較して傾斜も強く、やや手ごわくなる。水線右の凹角沿いにルートを取るが、様々なムーブが可能で、プロテクションはカムがしっかりと効く。クライミングルートしても実におもしろいピッチだ。
下段テラスを振り返る。なかなかの高度感だ。  
  4P目終了点は、8畳ほどの乾いた平らなテラス。
天気が良ければ、ここでのんびりビバークするのも悪くないだろう。
【5P 45m IV】
5P目は、ルート取りが難しい。テラスの左側からスタート。右に左にルートを探しながらのクライミングとなり、ロープの流れに気を使った。ロープ流れを考えるのであれば、テラスの右側からスタートする方が良いかもしれない。
 
  落ち口近くのテラスに這い上がるワンポイントがかなり微妙なクライミングを強いられる。
ロープを50mぎりぎりまで伸ばして、中段の滝の落ち口に達した。
残るは上段の滝。
乾いた岩のクライミングを楽しめた中・下段と比較して、濡れた岩のクライミングが避けられず、傾斜もかなり強い。この場所から、尾根に逃げることも可能であるが、せっかくなので取りついてみることにしよう。
 
【6P 30m III】
まずは、少し右上し、ブッシュをかき分けながらトラバースし、滝身に近づいて行く。
ブッシュがうるさい以外は、このピッチはさほど問題になるところはない。
 
【7P 35m IV+】
いよいよ上段の滝に取りつく。まずは正面右の垂壁に、ボルトが一本見え、それを目指して登る。そこから、垂壁を回り込むところがかなり微妙だ。ボルトにあぶみを掛け、あぶみ上段から垂壁を回り込んだり、水線に絡んで登ったり、それぞれ得意なムーブで切り抜ける。
その上のカンテ登りも濡れていて気を使う。最後は右手のルンゼを詰めて立ち木でピッチを切った。
 
  振り返ると、上段の滝と、その美しい釜、正面に右岸の豪快なルンゼが見え、なかなか見事な眺めの場所だ。
【8P 40m III】
この先は、滝身に近づくか、右寄りに登るか。
滝身に近づくルートは魅力的ではあるが、濡れて傾斜も強く、かなり困難なことは容易に解る。結局右寄りのブッシュの中にルートを求めることにした。
ルンゼ沿いのブッシュをしばらく登り、突き当った垂壁の基部を右にトラバース。壁の中をブッシュが下りてきている弱点をついて、今度は左上。
このピッチはブッシュ登りに終始した。
 
  【9P 45m III】
最終ピッチ。とはいえ、ブッシュの中のピッチ開始時点では、これが最後になるのか、落ち口に無事達することができるのか、全く分からない状態である。
落ち口と思われる方向にバンドをつなぐようにしてモンキークライム。やがて不意に視界が開け、ふたたび滝の横に達していた。見上げると、左上、わずか15mほどのところに落ち口が見える。
最後の登りは、濡れた岩に気を使うが、登り自体は難しくなく、抜群の高度感のある気持ちの良いピッチだ。ぴったりと落ち口に達することができた。
わずかにブッシュ登りがあるものの、全体としてオールフリーの乾いた快適なピッチが続き、ブッシュを抜けた先は爽快なフィナーレが待っている。
泥臭い登りを強いられることが多い大滝登攀の中では、実によくできたルートであるといえるだろう。
15:30に5人全員が落ち口に立つ。
折しも紅葉まっ盛り。眼下に広がる紅葉の谷を眺め、しばし完登の余韻に浸った。
 
  滝の上は穏やかな渓相が広がっていた。そのまま遡行してもよかったが、しばらく前に振り始めた雨が本降りに。右岸側の尾根を戻る最短ルートを取ることにした。
尾根を15分も詰め上がると間もなく登山道に達した。あとは1時間ほどの歩きで駐車場に戻ることができた。