※BC(バックカントリー)で遊ぶには十分な装備、知識、経験が必要です。安全に注意し、レベルに合ったフィールドで楽しみましょう。
木曾御嶽 兵衛谷~シン谷遡行
2008年7月19日

  御嶽西面に深いV字谷を刻み、御嶽に突き上げる兵衛谷。本流・濁河川の巌立から遡行を開始、シン谷につないで山頂付近の賽の河原に突き上げれば、距離15km、標高差2200mの長大でダイナミックな沢旅を楽しむことが可能だ。
(レポート:相川 写真:相川、橋本、川崎)
  7月19日
この3連休、当初は雨予報であったが、直前になって天候が好転。絶好の沢登りの天気となった。
何度か計画をしつつも、天候に恵まれずに実現せずにきた兵衛谷遡行計画を実行することにした。入渓は、巌立公園から。標高差2200mの長い沢旅の始まりだ。
  泳ぐ沢登りの基本レイヤリング。
上下ともフラッドラッシュスキン+フラッドラッシュの撥水のウエアの重ね着をするのがお勧め。兵衛谷は水が非常に冷たいため、ボトムにカヤック用のパドリングパンツを併用している(雨具でもよい)。
泳ぎが続いて寒くなったときは上も雨具を併用したが、ほとんどの部分はこのスタイルで快適に遡行することができた。

参考リンク:
沢登りのレイヤリング
本日前半は、濁河川の本谷を行く。
小さな滝と淵が続き、大した悪場はないが、泳ぎまくりとなる。
ゴージュバッグが大活躍。
 
 
時にはへつりを交えて弱点を突きつつ   ガンガン泳ぐ。水の色がきれいだ
やがて、両岸がゲートのように狭まり、間を水流が走り抜けている場所にやってきた。このあたりが濁河川本谷部分の核心か。右岸をトラバースするが、頭を押さえつけられて一歩が結構怖い。ここはロープを出す。  
  やがて、本谷と兵衛谷の出合へ。しばらくは平凡な川原歩きが続いた。本日の核心ゴルジュの手前、右に美瀑を見るところでしばしの休憩。
まずは大釜を泳いで、倒木のかかる10m滝。
突破口を求めて周囲をうろうろするも、どこもぬめっていてなかなか厳しい。
傾斜もあり、一見かなり難しそうに見えた倒木の左が、適度なホールドがあって意外な弱点であった。ここは上からロープで確保する。
 
  続いて、地図に名前も載っている曲滝。
なるほど、途中の釜で滝が折れ曲がっている。ここは直登は無理で右岸側を巻く。
滝を越えて再びゴルジュへ。2mの斜瀑は岩がかなりぬめっていて、ステルスソールでは厳しい。唯一のフェルトソールのK崎さんが、頼りない残置ロープを利用してリードで突破。
ここは、残置ロープがなかったらかなり難しい登りを強いられていただろう。
 
  その先で、川幅がぐっと狭まってくる。右岸側の壁が覆いかぶさるように迫り、迫力のある場所だ。
釜を泳いで、最初の小滝を越える。その先の釜をへつり、左に曲がった先の4mほどの滝がかなり悪そうだ。ホールドが乏しい上にぬめっており、ステルスソールではかなり厳しそう。
滝の左側が何とか登れそうだが、かなり微妙なトラバースだ。
1,2度トライしてみるも、やはりステルスソールではぬめった岩がかなり厳しく断念。再びフェルトソールのK崎さんが、微妙なトラバースをこなして突破。
後続はFIXしたロープをゴボウで登る。
 
  あたりはだいぶ暗くなってきたが、まだまだゴルジュは続く。
再び20m級の滝が出てくるが、今度は左岸側にはっきりとした巻き道がついており、それを利用する。巻きの途中で、岩のトンネルなどがあってなかなか楽しい。
滝を越えると、ようやく平流に。
適当な平地を見つけて今夜のビバーク地とした。
ビバークのシェルターにはもちろんフライングシェードを使用。
 
7月20日
2日目。今日は長丁場だ。7時過ぎにテン場を出発する。
しょっぱなの釜を持った小滝で朝イチから泳がされることとなった
 
 
その上は、ナメと斜瀑が連続する楽しい渓相   噂に聞く、出口のない滝。
同じ御嶽の鈴が沢でも同じようなものを見たが、他では見たことがない
まもなく、取水堰堤が現れる。何とも無粋な、と思うがこれのおかげでこれまでの遡行が楽になっているのもまた事実か。
堰堤部分がぎりぎり登れる斜度であったので、ステルスソールのフリクションを利用して直登で突破。
 
  取水堰堤の上は水量が一気に増える。ナメ全面に、水が豪快に流れてなかなかの迫力。
  その先で、大きな魚影を見かけ、しばらく竿を出してみるが釣果はなし。こんなところでのんびりとしているヒマはなかったことにあとで気付くのであるが…
大きな釜を持った2連の滝は、泳いで倒木の隙間からよじ登る。  
 
緑が眩しい。森の深さを感じるところだ   次第に現れる滝の高さが増し、手ごわくなってくる
ここから先は、まさに大滝の競演だ。まずはこの岩溝を割って落ちる大迫力の滝。高さは20mくらいか。
右岸側を巻いたが、途中かなり悪い部分もあった。
 
  20mクラスの滝はいくらでも出てくる。水量、形ともに、どの滝も並みの沢であれば「メインディッシュ」になりそうな見事なものだ。
次にでてくる大滝は、だいぶ手前からはっきりとした巻き道があったので、たどっていくと…だいぶ登って林道に出てしまった。釣り人がつけた谷へのアクセスの道だったか。
この林道はすぐ終点。尾根をひとつ越えて下ると、いい具合に目的の滝を巻けたようだ。
 
滝と滝をつなぐ区間も、見事なナメと斜瀑がつづく   このくらいの滝では、もはや驚かない
  さすがに驚いたのはこの滝。
岩のアーチの下をくぐるように滝が落ちている。
釜を泳いでアーチをくぐって直登する。
やがて、見事な柱状節理の岩の発達した大滝が前に現れた。
岩の感じがいかにも「材木」だったので、ようやく材木滝まで来たと一瞬喜ぶがヌカ喜びであることが判明。
右岸のルンゼから巻きにかかる。ガレ場を登るにつれ、次第に傾斜が経ってきて最後はほぼ垂直のチムニーになった。このチムニー登り、持つホールドのほとんどが動き、個人的にはこの沢で一番恐ろしかったかも。上りきった先もビレイ点などは取れそうになく、肩がらみで後続を確保した。
 
  その上はほっと一息つける渓相。
その先の川幅いっぱいに広がる滝が、材木滝であった。
見事な滝なのだが、今まで見てきた不思議な形状の滝と比べるとむしろ平凡に見えてしまうほど。
ここには遊歩道が下りてきており、右岸側から途中までその道を利用して巻く。
 
  登山道?にかかるつり橋を越えると、つるつるの両岸の中を淵と小滝が連続する場所に出た。
側壁をへつってしばらく行ってみるが、微妙なへつりが延々と続いている。一度ドボンすると途中で這い上がるのは難しい。かなり流されるだろう。時間もないのであきらめて、右岸の上につけられたトラバース道をたどり、一気にこの滝群を巻くことにした。
またも夕闇迫る頃、ビバークできそうな平地を見つけ、本日の宿とした  
7月21日
今日は3日間で一番標高差があり、登った後も御岳からの下りが待っている。
6:30に幕営地を出発。1時間ほどでシン谷出会いに到着した。
 
  左手にシン谷が、右手に兵衛谷が、いずれも大滝となって落ち、間に湧き出した温泉が水量少ないが滝となっている、見事な空間だ。
ここから先は、シン谷をたどることになる。
シン谷の滝の右岸側の手前に、フィックスロープが残っており、これをたどって右岸を巻く。ほぼぴったり落ち口に降り立つことができた。
その上は、水に温泉成分が混じって、青白い独特の水の色となる。直登可能な滝が連続し、楽しい区間だ。  
 
やがて前方に百間滝50mが   左岸側に巻き道がたどる。途中崩壊していてガレ場を怖いトラバース
シン谷上部の滝はいずれも直登攀不能な大滝ばかり。標高差があり、しんどい草付きの巻きが続く。  
  谷は次第に水量を減らし、ガレ場登りの様相を呈してくる。時々谷が狭まって、そろそろか、思うと大滝が現れるというパターンが続く。炎天下の中、流れの復活する滝つぼがありがたい。
最後の大滝、神津の滝のあたりから、時々雪渓が現れるようになる。
やがて雪渓の奥に10m滝。登れるという話もあったが雪渓に埋められていて接近が難しく左岸側を巻く。
 
  この上は完全に崩壊地となり、左岸側をずっとトラバースするように進んでいく。
ルートファインディングがなかなか難しい。
標高2750m付近にある滝。日本最高所の滝らしい
ちょろちょろとは言え、こんな高所にあって、この炎天下、水が流れているのが驚きだ。
 
  この滝を右手に見ながら、ガレ場を越えると、一転、穏やかな草原となった。ようやく源頭に抜けたのだ。ちょうど花のシーズンで、辺りは高山植物が咲き乱れていた。長い沢もようやく終わり、しばしの休憩タイム。
そこから少しの登りで、賽ノ河原を経由して登山道に合流。
飛騨頂上を経由して濁河温泉に下山したときは16時を過ぎていた。
兵衛谷からシン谷のこのコース、さまざまに移り変わる渓相と豪快な滝群、滝の登り、巻き、泳ぎ、雪渓歩き、源頭の花畑と、沢登りのすべての要素を腹いっぱい味わうことができる。挑戦しがいのあるルートだ。